要件定義書とは?非エンジニアのための書き方入門

2026年8月31日・約7分で読めます

「要件定義書を用意してください」と言われて、手が止まった。検索してみたら難しそうな説明ばかりで、余計に分からなくなった。よくあるつまずきです。発注する側が書くものは、実はもっと素朴で構いません。

要件定義書とは「見積もりが取れる1枚の設計図」です

専門書には、システムに求める機能や性能を定義した文書、といった説明が載っています。間違いではありませんが、発注する側からはこう考えるほうが実用的です。要件定義書とは、これを渡せば見積もりが取れる紙のことです。

家を建てるときを思い浮かべてください。「3階建てで、1階に駐車場、2階にLDK20畳、予算は3,000万円まで」と伝えれば、工務店は金額を出せます。「いい感じの家がほしい」では出せません。要件定義書がやっているのは、それと同じことです。

だから、きれいな書式である必要はありません。判断に必要なことが書いてあるかどうかがすべてです。文章が下手でも、箇条書きでも、手書きをスマホで撮ったものでも通じます。

要件定義の最低限は、この6項目です

網羅しようとすると終わりません。まずは次の6つだけを埋めてください。この6項目が埋まっていれば、概算の見積もりはたいてい出せます。

項目書くこと目安
1 目的なぜやるのか。困っていることと、その数字2〜3行
2 現状の流れいま誰が何をどの順でやっているか5〜10ステップ
3 新しい流れできあがったあと、誰が何をするか5〜10ステップ
4 必須とできればどうしても要るものと、あれば嬉しいもの各3〜7個
5 使う人誰が使うか。人数と、パソコンの得意不得意3〜5行
6 予算と期限いくらまで、いつまでに2行

4番目の「必須とできれば」は、英語で must と nice-to-have と呼ばれることもあります。呼び方はどちらでも構いません。大事なのは、線を引くこと。全部が必須になっている資料は、範囲がないのと同じで、金額が大きくなりやすいところです。

5番目の「使う人」は忘れられがちですが、作るものが変わる項目です。70代のパート職員が週2日だけ使うのか、20代のスタッフが毎日使うのか。同じ機能でも、画面の作り方は変わります。

悪い例と良い例(1項目ずつ短く)

書き換えのコツは、抽象語を数字と場面に置き換えることです。

目的

  • 悪い例:業務を効率化したい
  • 良い例:予約の電話が1日15件ほどあり、施術中に取れないことが多い。取り逃しを減らし、電話の時間を半分にしたい

現状の流れ

  • 悪い例:電話で予約を受けている
  • 良い例:電話が鳴る → 手が空いていれば出る → 紙の台帳で空きを確認 → 名前と電話番号を書く → 施術メニューを聞く → 復唱して切る

新しい流れ

  • 悪い例:自動で予約できるようにする
  • 良い例:お客様がスマホで空き時間を見る → 希望の枠を選ぶ → 名前と電話番号を入れる → 確認メールが届く → 店側は朝と夕方に一覧を見る

必須とできれば

  • 悪い例:予約管理と顧客管理と売上分析ができること
  • 良い例:必須は「空き枠の表示」「予約の受付」「前日のリマインド」。できればで「過去の来店履歴の表示」(売上分析は今回やらないことに回す)

使う人

  • 悪い例:スタッフが使います
  • 良い例:店主(50代・スマホは使えるがパソコンは苦手)と、週3日勤務のスタッフ1名。お客様は30〜60代が中心

予算と期限

  • 悪い例:できるだけ安く、早く
  • 良い例:初期30万円まで、月額は5,000円程度まで。3か月以内に使い始めたい

どの例も、やっていることは同じです。誰が・いつ・何件・いくら、を足しているだけです。

そのまま使える、要件定義書のサンプル

架空の整体院を例にした簡易版です。この分量で、概算の相談は始められます。

■ 要件定義メモ:予約受付の見直し(2026年8月31日)

1. 目的
   予約の電話が1日15件ほどあり、施術中は取れない。
   折り返しに1件5分、1日で40分ほどかかっている。
   取り逃しを減らし、電話にかける時間を半分にしたい。

2. 現状の流れ
   1) 電話が鳴る(受付時間 10:00-19:00、火曜定休)
   2) 手が空いていれば出る。施術中は留守番電話
   3) 紙の台帳で空き枠を確認する
   4) 名前・電話番号・メニューを聞いて書く
   5) 留守電の分は、休憩時間に折り返す

3. 新しい流れ
   1) お客様がスマホで空き枠を見る
   2) 60分か90分のメニューを選ぶ
   3) 名前と電話番号を入れて送信する
   4) お客様に確認メール、店にはLINE通知が届く
   5) 店主は開店前と昼休みに、その日の一覧を確認する
   6) 電話で希望された分は、店側が同じ画面に手で入れる

4. 必須とできれば
   必須:空き枠の表示/予約の受付/前日18時のリマインド(メールで)/
         店側の手入力/キャンセルの受付
   できれば:来店履歴の表示/回数券の残数表示/複数スタッフ対応

5. 使う人
   店主(50代・男性・スマホは日常的に使う。パソコンは苦手)
   スタッフ1名(週3日・火木土)
   お客様は30〜60代。半分ほどが電話に慣れた常連

6. 予算と期限
   初期30万円まで、月額5,000円程度まで。
   11月の繁忙期の前に使い始めたい。

7. 決まっていないこと
   ・当日予約を受けるかどうか
   ・キャンセル料をどう扱うか
   ・お客様情報の保管期間と、プライバシーポリシーの用意

最後の「決まっていないこと」は、あえて残しておく欄です。分からないことを空欄にしておくと、相手から「ここはどうしますか」と聞いてもらえます。無理に埋めた思いつきより、正直な空欄のほうが役に立ちます。

書けないときの、3つの選び方

6項目を前にして手が止まったら、次の3つから選べば大丈夫です。

1. 自分で書く

いちばん安く、いちばん自分の仕事に詳しい人が書く方法です。1日で仕上げようとせず、1項目ずつ、3日に分けて書くと進みます。順番は、2の現状の流れから書くのがおすすめです。毎日やっていることなので、いちばん手が動きます。

2. AIに手伝わせる

書き出しをAIに任せる方法です。ゼロから書かせるのではなく、自分の言葉を投げて整えてもらう使い方が向いています。具体的な頼み方はChatGPTへの頼み方テンプレ5選にまとめました。ただし、AIは自社の事情を知りません。出てきた文章に、実際と違うところがないかを必ず自分で確かめてください。

3. 書ける人に頼む

時間が取れない、書いてみたが自信がない、という場合です。聞き取りをして書き起こす仕事として、外に頼むこともできます。費用はかかりますが、範囲が定まって見積もりの精度が上がる分、結果的に安く収まることもあります。

まとめ

  • 要件定義書とは、渡せば見積もりが取れる1枚の設計図のことです
  • 最低限は6項目。目的/現状の流れ/新しい流れ/必須とできれば/使う人/予算と期限
  • 書き方のコツは、抽象語を数字と場面に置き換えることです
  • 「全部必須」にせず線を引くと、金額の幅が狭まりやすくなります
  • 決まっていないことは、無理に埋めず空欄のまま残して構いません

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