開発会社に相談する前に準備する3つのもの

2026年8月31日・約6分で読めます

思いきって開発会社に問い合わせてみたものの、話がかみ合わないまま終わってしまった。あるいは、届いた見積もりの金額に驚いて、そのままになっている。よく聞く話です。多くの場合、原因は相手にも自分にもなく、持っていったものにあります。

相談が空回りするのは「何ができますか?」から始めたとき

開発会社への最初の一言が「AIで何ができますか?」だと、返ってくる答えはたいてい「たいていのことはできます」になります。嘘ではありません。ただ、そこから先へは進みません。

開発会社は、作りたいものが決まっている人のための専門家です。何を作るべきかを当てる仕事ではないので、材料がないと見積もりの出しようがありません。しかも、業種ごとの当たり前は外からは見えません。工事の写真管理も、美容室の予約も、その業界にいる人には説明するまでもないことが、相手にはまったくの初耳です。材料が足りないときに起きるのは、次の3つです。

  • 打ち合わせが「ヒアリング」で終わり、次の予定が決まらない
  • 想定される作業を多めに見た、大きめの金額が出てくる
  • あとから「それは聞いていません」という追加費用が発生する

3つめは特につらいところです。伝えていなかった前提は、見積もりにも入っていません。だからこそ、相談の前に手元をそろえておくと、話の質が変わります。用意するものは3つだけです。

準備するもの1 困りごとの一覧

まず、いま困っていることを箇条書きにします。解決策は書きません。困っていることだけを、起きている場面と数字つきで書くのがコツです。

架空の例として、社員6名の内装工事会社を考えてみます。

【困りごとの一覧】
1. 現場写真がスマホに溜まり、報告書に貼るのに1件30分かかる(週6件)
2. 見積書をExcelで手作りしていて、単価の更新漏れが月に1〜2回ある
3. 職人さんへの明日の予定連絡が、毎晩20時ごろの電話とLINEで20分
4. 材料の発注が担当者の記憶頼みで、月に1回は買い忘れが出る
5. 請求書の作成が月末に集中し、半日つぶれる

「報告書が面倒」ではなく「1件30分かかる、週6件」。この粒度まで下ろすと、相手は優先順位をつけられます。全部を一度に解決しない前提で、5個から10個ほど書き出せば十分です。

思い出せないときは、1週間だけメモを持ち歩いてみてください。「またこれか」と思った瞬間に一行書く。それだけで、上位の困りごとはほぼ出そろいます。

準備するもの2 いまの仕事の流れ

次に、困りごとの上位1〜2件について、いまどうやっているかを順番に書きます。図でなくて構いません。番号を振った箇条書きで足ります。

【いまの流れ:現場写真から報告書まで】
1. 職人が現場でスマホで写真を撮る(1現場20〜40枚)
2. 夕方、LINEのグループに送る
3. 事務がPCでLINEを開き、写真を1枚ずつ保存する
4. Wordのテンプレートに貼り、位置とサイズを調整する
5. 工事内容のコメントを手入力する
6. PDFにして、お客様にメールで送る
7. 送った控えを共有フォルダの年月フォルダに保存する

あわせて、例外も1行足しておくと親切です。「急ぎのときは職人が直接メールを送ることがある」「大きな現場では写真が100枚を超える」。この手の例外は、あとから作り直しの原因になりやすいところです。

ここまで書くと、面倒の正体が見えてきます。この例なら、時間を食っているのは3と4です。逆に5のコメントは人が書いたほうがよい部分かもしれません。どこを機械に任せ、どこを人が持つのか。その線引きの話ができるようになります。

準備するもの3 できたら嬉しい状態

最後に、うまくいったときの状態を書きます。使う道具の名前は書かなくて構いません。誰が、いつ、何をして、どうなるのか。それだけです。あわせて、その仕組みを使う人のことも数行そえておくと、作るものの形が決まりやすくなります。

【できたら嬉しい状態】
・職人が現場で写真を撮り、工事名を選んで送信するだけで終わる
・事務は夕方に一覧を開き、内容を確認して送信ボタンを押すだけ
・1件あたり30分かかっていた作業が、5分程度で終わる
・過去の報告書は、お客様名か工事名でその場で探せる

【使う人】
・職人4名:全員スマホを使う。iPhoneとAndroidが混在、いずれも私物
・事務1名:パソコンでの入力は問題ない
・社長(私):現場と事務所を行き来し、確認はスマホですることが多い

【今回はやらないこと】
・見積書と請求書の作り直し(次の段階で考える)
・職人さんに新しい操作を覚えてもらうこと(送信は1〜2タップで終わる形にしたい)

【予算と時期】
・50万円くらいまでで検討したい
・繁忙期に入る前に使い始めたい

「今回はやらないこと」を書けるかどうかが、実は分かれ目です。範囲が決まっていない相談は、開発会社としても大きめに見積もらざるを得ません。予算も、言うと足元を見られると心配される方がいますが、伝えたほうが現実的な案が出てきやすくなります。

書き方にはひとつコツがあります。道具名(「LINEのまま」など)で書くと、実現できない組み合わせになることがあります。「覚えることを増やさない」のように、守りたい中身で書くほうが安全です。

この3つがそろうと、見積もりはこう変わります

同じ相談でも、持っていくものによって返ってくるものは変わります。

準備なしで相談したとき3つを持っていったとき
最初の返答「まずはご要望を伺います」「この範囲なら概算で出せます」
見積もりの形一式いくら、の1行作業ごとの内訳を頼みやすい
金額の幅広い(不確実な分を上乗せ)狭い(範囲が決まっているため)
比較のしやすさ他社と比べにくい同じ資料で相見積もりが取れる
追加費用後から出やすい範囲外と分かるので相談しやすい

資料を送るときは、本文に一文だけ添えると伝わりやすくなります。「添付の1〜3を前提に、概算の金額と期間、進め方を教えてください」。こう書いておけば、相手も何を返せばよいか分かります。

とくに効くのが相見積もりです。同じ紙を3社に渡せば、金額の差が「見ている範囲の差」なのか「単価の差」なのかを見分けられます。口頭でそれぞれに説明すると、社ごとに伝わり方が変わり、比較になりません。

3つ+使う人をまとめると、「要件定義書」の骨格になります

ここまでの3つ、困りごと・いまの流れ・できたら嬉しい状態。それに「使う人」を足して1つの文書にまとめたものが、要件定義書の骨格です。専門家が特別な記法で書くもの、というイメージがあるかもしれませんが、発注する側が用意する分にはこの粒度で通じます。

もう少し形を整えたい場合は、要件定義書とは?非エンジニアのための書き方入門に、最低限の6項目とサンプルをまとめています。書き方の型を先に見てから書き出すほうが早い、という方はそちらからどうぞ。

まとめ

  • 「何ができますか?」から始まる相談は、答えが返ってきても前に進みにくくなります
  • 準備するのは、①困りごとの一覧 ②いまの仕事の流れ ③できたら嬉しい状態、の3つです
  • 困りごとは、場面と数字(週6件、1件30分)まで下ろして書きます
  • 「今回はやらないこと」と予算・時期を書くと、金額の幅が狭まりやすくなります
  • 3つに「使う人」を足してまとめると要件定義書の骨格になり、そのまま相見積もりの資料になります

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